■ 第2回BunDokuシネマカフェ


お 題:「トリュフォーを語ろう」

   (メイントーク「愛という名の狂気」;大分県立芸術短期大学 准教授 永田道弘さん)
日 時:2015年3月7日(土)18:00~20:00
会 場:カモシカ書店(大分市中央町)
参加者:29名

 

ファシリテーターのシミズです。

第2回目のBunDokuシネマカフェを開催しました。今回も多くの参加者の方々にお集まりいただき、たいへんありがとうございました。

今回のBunDokuシネマカフェはフランソワ・トリュフォー没後30年ということでシネマ5さんでの特集上映に合わせて開催いたしました。


前半は大分芸術短期大学の永田さんと村上さんに「愛という名の狂気」というテーマでトリュフォー映画について解説していただきました。

トリュフォーの映画はコインの表と裏、あるいはジキルとハイドのように2種類に分けることができる。ひとつはドワネルものと呼ばれる家庭的でユーモアにあふれた映画。「家庭」「夜霧の恋人たち」など。もうひとつは「アデルの恋の物語」や「突然炎のごとく」に代表されるひとつの恋愛が狂気や死といった極限状態にまで突き進んでいく映画。心的な葛藤が失神や嘔吐といった肉体的な反応となってあらわれるトリュフォー演出の特徴を挙げ、いくつかのシーンをみんなで確認しました。またトリュフォーの足へのフェティシズムにも注目。いろんな作品に通底する、女性の足を執拗に写しだしているいくつかのショットも見てみました。

「おれたちの幸せは映画の中にしかない」

後半部は前半の話を受けて、みなさんで特に「突然炎のごとく」について語り合いました。異性関係において無軌道に振る舞うジャンヌ・モロー扮するカトリーヌに共感できるか否かや、トリュフォー自身の恵まれなかった私生活と映画のなかでの幸福についてなど。
また映画史的記憶と呼ばれるようないろんな映画へのオマージュがトリュフォーの映画には溢れていること。「ファム・ファタール(運命の女)」について、父と慕った、ジャン・ルノワールとの関係、フランスと日本における「愛」のあり方の違いなど、いろんな論点からの対話ができたように思います。

僕自身トリュフォーの映画を今回見直していろいろと気づいたことがあるのですが、映画が幸福だった頃の映画と言うのでしょうか、例えば「突然炎のごとく」の鉄橋での駆けっこのシーンや白のシャツに映える強い光線の下でのサイクリングやピクニックのシーンなどはもう今の映画では撮ることは難しい、失われてしまったもの、それは「世界」への信頼のようなもの、無条件に世界を信じることが難しくなっている現在をトリュフォー映画から認識できます。現在ならどうでしょう。ジャ・ジャンクー監督の「青の稲妻」での自転車シーンと比較してみると、世界の肯定の仕方が、あるいは魂の救いのあり方が大きく変わってしまっていることに気づくのではないのでしょうか。

 

みなさま素敵な時間をありがとうございました。BunDokuシネマカフェは今後も不定期ではありますが、続けていきたいと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いします。

 

■ 参考

 

<大分芸術短期大学 永田さんの選ぶ映画オールタイムベスト10>


1.「マル秘色情メス市場」監督 田中登
2.「カルフォルニア・ドールズ」監督 ロバート・アルドリッチ
3.「フェイシィズ」監督 ジョン・カサヴェテス
4.「シェルブール」監督 ジャック・ドゥミ
5.「女と男のいる舗道」監督 ジャン=リュック・ゴダール
6.「幕末太陽伝」監督 川島雄三
7.「残菊物語」監督 溝口健二
8.「サイコ」監督 アルフレッド・ヒッチコック
9.「マルホランド・ドライブ」監督 デヴィッド・リンチ
10.「デス・プルーフ」監督 クエンティン・タランティーノ