■ 第4回BunDoku哲学カフェ開催報告


テーマ:「働くとはなにか?」(当日決定)

日 時:2014年10月25日(土)19:00~21:30

会 場:カモシカ書店さん(大分市中央町)

参加者:21名


BunDoku哲学カフェ、ファシリテーターのシミズです。
第4回目のBunDoku哲学カフェを開催いたしました。今回も21名の参加者にお集まりいただきまして、たいへんありがとうございました。毎回早々に定員に達してしまい運営側は嬉しい悲鳴を上げております。


今回はテーマを当日に決めるというやり方に挑戦してみました。通常はテーマ設定が事前にされてあって参加するに際してはみなさん話す内容などを考えて臨まれることが多いと思うのですが、そうした事前の準備や想定などを取っ払って自分の身一つで参加していただき、その場その時で思いつく考えや今まで生きてきた中で積み重ねてきた思考をぶつけてもらうことにより、参加者のより生身の部分が表出されるような即興性の強い回にしたかったというのがあります。元々哲学カフェは参考文献などを読んで臨むというものではないので、事前に準備していたことを披露する場というより、むしろ事前に考えていたことが崩れていくことに醍醐味があるのではと考えています。
BunDoku哲学カフェでは最初に手短に自己紹介をしていただいています(それをあえてしない哲学カフェの方が多いのですが)。そのときに各自採り上げてほしいテーマを言っていただくことにしました。個性とは何か、正義とは、暴力とは、哲学とは、優しさとは、お金とはなど、どれも扱いたいテーマでしたが、最も多くそして過去のアンケートでも希望のあった「働くとはなにか」に決定。対話を開始しました。

まずなぜ働くのか、その動機を聞いてみるところから。「働くことの目的を見つけるために働いている」「自分の手で稼ぎたいため」「社会とのつながりのため」「働かないではいられないから」「働くことが自己承認に結びつく」という仕事から直接、充実感を得ていくものから、「やりたいこと(趣味)を持続させるために働いている」など別に主たる目的があってそれを満たすためという二つに分かれるようでした。これから就職するある学生の方は学校を卒業するから働かざるを得ないという、自分の強い意思というより社会の流れに沿う形で働いていくという考えでした。ちなみに私は大学生の頃、就職活動をほとんどしませんでした。3年生の夏休みが終わって、周囲がいっせいにスーツに着替え就活をし始めたときにはゾッとしました。周囲の流れに合わせて自分も動くということがどうしてもできませんでした。甘えていると言われればそうなのですが、そういうマジョリティの動きが怖かったのだと今では考えます。対話の中でも「働くとは、マジョリティに属する一番簡単な手段である」という意見もあり、「働く」ということはそれほどまでに一般社会とリンクさせる強烈な力、こう言ってよければ強迫観念のようなものを私は感じることがあります。確かにどなたかが発言されたように私たちは「食べても死ぬ」存在なのです。働いてない人の肩身の狭さ。何かの役に立たなくても肯定されるような人間のあり方はあるのでしょうか。私は半年くらい無職の時期があって友人を頼りに京都を無為に彷徨っていたことがあったのですが、どこにも帰属していない自分の脆さをしみじみと噛みしめながら一日鴨川の流れを見て、棋士の羽生善治氏が「定跡(最善とされる決まった指し方)に頼らないと弱い」みたいなことを言っていたのを思い出したりしながらも、なんでもないことの豊かさもあるよなあと自分が空っぽになった時に初めて風景が充溢してくるような瞬間を何度か体験しました。

その後、対話は行きつ戻りつしながらも「働くとはなにか」をめぐって様々な意見が出されましたが、みなさんそれぞれに確固とした労働観を既に持っていて、対話のキャッチボールというよりは各々の労働観を語っていくという印象が強かったです。働くということは最も日常的でリアリティがあることなので日々みなさん考えられていることなのかなと思いました。まだ未就労の学生さんが多ければ、違った対話になったかもしれません。お金のことやベーシックインカム、主婦業のことなど、もっと突っ込んで話したい内容がたくさんありましたが、いつものようにモヤモヤっとして終了となりました。休憩を挟んでカモシカ書店さんから提供されたグリーンカレーはピリッとして美味しかったです。 ありがとうございました。

BunDoku哲学カフェは、今後も月1回くらいのペースで開催を予定しています。年末から年明けにかけてはブック・バーやアートスペース、お寺などいろんな場所で対話の場を持ちたいと考えています。
話すテーマはもちろんのこと、場の進行などにも趣向を凝らして、対話しやすい場づくりに努めたいと考えています。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。