■ 出張BunDoku「BunDoku Kids」@ハートフルウェーブ vol.1
日 時:2015年12月12日(土)午前10:00~12:00
会 場:フリースクール「ハートフルウェーブ」さま
参加者:6名
案内人のAkihisaです。
今回は、市内のフリースクール「ハートフルウェーブ」さまにて、子どもたち向けの出張BunDokuを開催させていただきました!
普段のBunDokuでは、参加者ひとりひとりがオススメの本を持ち寄って紹介する「本のプレゼン会」のようなスタイルですが、今回の出張BunDokuではハートフルウェーブさまのご希望もあり、課題本を一冊読み込み、学びをシェアするスタイルで行ないました。まさに「読書会」らしい読書会ですね。
本や当日の進行についてはお任せいただけることになったので、悩んだ末に選んだ課題本は「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎;岩波文庫)。1937年、戦前の著作ですが、時代を超えて主人公コペル君の日常に自身を重ね合わせながら、「おじさんのノート」に込められた人生哲学を学べるのではないか、との期待を込めて選びました。
(主人公コペル君の名前や「おじさんのノート」が気になった方はぜひ本を手に取ってくださいませ。現代を生きる大人が読んでも瑞々しく、含蓄に富む著作です)
今回の参加者は中学生・高校生から大人まで。とは言っても、本の前では年齢も肩書きも関係なくフラットなひとりひとりです。
一冊全部を対象にすることは難しかったので、今回は第一章を読んで、それぞれの視点からの感想を聞くことから始めました。
第一章「へんな経験 ~ものの見方について~」では、コペル君がデパートの屋上から東京の街を見下ろしているとき、そこには自分の知らないたくさんの人たちが自分と関わることなく生きていて、逆に言えば、自分自身もこの地球上に無数に散らばるちっぽけな分子の一つに過ぎないのだ、ということを発見します。
おじさんは、コペル君がこの発見をしたことについて、「今日、君がしみじみと、自分を広い広い世の中の一分子だと感じたということは、ほんとうに大きなことだと、僕は思う」と言います。そして「それは、天動説から地動説に変わったようなものなのだ」、つまりコペル君が、子どもらしい自分中心の世界から一歩外へ出て、自分を相対化・客観化する視点を発見したということなのだと言います。参加者からは、
・その「ちっぽけな自分」を発見する感覚ってわかる
・その感覚を感じたとき恐怖を覚える
・自分があの雑踏のなかの彼・彼女だったらと想像する
・例えば車窓から外の景色を見たとき、もし自分がここで生まれ育っていたらと想像する
・人だけでなく、無機質なものに感情移入することもあったかも
などの感想が出され、多かれ少なかれ、誰もがそのような視点を感じる時があることが共有されました。(私自身も、例えば旅をしているときに途上国で厳しい生活を送っている人と出会うと、自分はたまたま日本に生まれたけど、ここで生きる彼・彼女だったとしてもおかしくなかったのに、と思う瞬間があります。可能的自我、と表現されますか)
さらに、「人間がとかく自分を中心として、ものごとを考えたり、判断するという性質は、大人の間にもまだまだ根深く残っている」「こういう自分中心の考え方を抜け切っている人は、広い世の中にも、実にまれなのだ」「たいがいの人が、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合のよいことだけを見てゆこうとする」といったおじさんの言葉に触れ、「暗に出版当時の戦争に対する批判的見地を書き込もうとしていたのかな」と中学生が発言し、大人を唸らせました。
その他、
・言葉がときどき古くて理解できない
・挿絵も歴史を感じる
・お母さんがコペル君に厳しくできないのは母として…(以下割愛)
・こんな風にあだ名をつけるって素敵
・おじさんのノートの言葉に、子どもの頃からのもやもやが晴れた気がした
などなど、それぞれの視点からの感想・学びが聞かれました。
正直なところ、このお話をいただいたときは「本を通して子どもたちと対話する」というのがどこまで可能なのかハラハラしながらの開催でしたが、予想していた以上に多くの発言があり、疑問が挙がり、皆で考え読み解き、発見と学びに満ちた2時間でした。
私自身、これまでずっと「学校以外の学びの場づくり」に課外活動の軸足があり、それがたまたまBunDoku(街の読書コミュニティ)という形で大人向けの社交場のようになったり、まったく別の活動で子ども向けの野外教育をしたりしてきましたが、当初は子どもとクロスするつもりのなかった読書コミュニティが、約3年の活動期間を経て子供たちの学びの機会にもなり得ると実感できたのは個人的にとても嬉しいです。
このたびは、貴重な機会をありがとうございました。
そして早速ですが、第二回、第三回の開催も決まってしまいました。笑
今回の学びと反省を活かして、さらに良い場づくりを目指していきたいです。
どうぞ今後とも、BunDokuをよろしくお願いいたします!
(大分朝読書コミュニティBunDoku 主宰 堀米 顕久)