■ 出張BunDoku「BunDoku Kids」@ハートフルウェーブ vol.5

日 時:2016年3月13日(日)10:00~12:00
会 場:フリースクール「ハートフルウェーブ」さま
参加者:6名

案内人のAkihisaです。
今回は、市内のフリースクール「ハートフルウェーブ」さまにて、子どもたち向けの出張BunDokuを開催させていただきました!

普段のBunDokuは、参加者ひとりひとりがオススメの本を持ち寄って紹介する「本のプレゼン会」のようなスタイルですが、こちらの出張BunDoku ではハートフルウェーブさまのご希望もあり、課題本を一冊読み込み、学びをシェアするスタイルで行なっています。まさに「読書会」らしい読書会ですね。
今回の課題本は、前回までに引続き「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎;岩波文庫)。今回は第五章を読んで対話を行ないました。

第五章「ナポレオンと四人の少年 ~偉大な人間とはどんな人か~ 」では、コペル君、北見君、浦川君が、水谷君の家に遊びに行くところから始まります。まず、後半の「おじさんのノート」は読まずに前半のストーリーだけで参加者から感想を聞くと、

 

・初登場のかつ子さんの存在感半端ない。

・かつ子さんの煽りがすごい。

・「苦しみが大きければ大きいほど、それを乗り越えてゆく喜びも大きい」とはどういうことだろう?達成感ということ?

・「お父さんは、その財力で、水谷君兄弟を、出来るだけ幸福にしてやりたいと考えていました」って言い切られるともはや清々しい。

・やり方はともかく、中学の上級生たちが、「学校の気風を…」と言っているのは今では考えられない責任感や連帯感があったのだなぁ。

・たまたま浦川君も来なければ、たまたまかつ子さんがコペル君たちのところで話さなければ、一緒に殴られる話にはならなかったのに、偶然の積み重ねと人と人との化学変化ってすごい。

・殴られることに対する恐怖心の度合いが、4人の中で違うんだなぁと。浦川君は苦労して生きてるから、殴られること自体は特に気にしていない様子。

・コペル君だけが4人のなかで自分の意思がないように見える。

 

などの感想が聞かれました。やはり、初登場のかつ子さん(水谷君のお姉さん)のキャラ性がとても強く、まず皆そこに圧倒されたようでした(苦笑)。また、「ナポレオン」という歴史上の人物に強くスポットライトを当てた内容に読め、これまでと様子が違うと感じる参加者も多かったように思います。一方で、これまでの内容から登場人物の性格や関係性が見えてきていることから、それぞれのスタンスを分析するような感想も聞かれました。

 

続いて、おじさんノートを読んでからは、

 

・歴史の大きな流れに沿って生きる必要があると言うけれど、どうしたらその流れに乗れるんだろう?その流れが見えるんだろう?

・その流れを読み間違えたまま突き進むと大変なことになるのかも。

・おじさんはナポレオンについても造詣の深い人物でしたか。

・ナポレオンという人物の実際について初めて詳しく知った。

・じゃあナポレオンはどうしたら良かった?進み続けるしかなかった、戦争をし続けるしかなかった人間で、だからこそ少なくとも前半期には英雄として認められたわけで。途中で進路変更できるような人間ではそもそもなかったのに。

・私は今も、横車を押し続けなきゃいけないことはたくさんあって、そうするしかないと思ってやってるけど、どうしたらいい?

・その「流れ」って、何だろう?

・「良い心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけを生かし切れないでいる小さな善人」「悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人」「人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しい」というのは具体的にどういうことだろう?

 

などの感想・疑問が聞かれました。

特に今回のおじさんのノートからは、「じゃあ結局どうしたらいいんだろう?」という疑問が多く出たように思いました。

そしてそれは、おじさん自身(あるいは著者自身)が、「本当はそうすべきなのにそうできない」、つまりおじさんのノートの中で書いている「人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しい」と言い表されている人間だと自覚しながら書いているからなのではないかと思いました。これは私の私見ですが、著者は執筆当時、戦争に突き進んでいく日本を真正面から止めることができない自分自身を含めた文壇の人間に向けて、この言葉を書いているように思うのです。であるからこそ、読者に明確にどうしたら良いかを示すことが出来ないのだと。

 

かつて米国の小説家レイモンド・チャンドラーが探偵フィリップ・マーロウに言わせたように、

 

「強くなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」

 

のですし、あるいはドイツのケストナーが著書「飛ぶ教室」の中で書いていたように、

 

「賢さを伴わない勇気は乱暴であり、勇気を伴わないかしこさなどくそにもなりません!」

 

ということは、時代を超える真実でありながら、いつの時代にもそう生きることが難しいのだと感じました。

 

総じて、この第五章は他の章と比べて内容やトーンの様相が異なり、参加者の戸惑いもあったかと思いますが、それも含めて、読み考え思考を深める機会となっていれば幸いです。

 

お集まりいただいた皆さん、楽しい時間をありがとうございました。
来月以降も引続き、コペル君と一緒に生きるということを考えていきたいと思います。

どうぞ今後とも、BunDokuをよろしくお願いいたします!

(大分朝読書コミュニティBunDoku 主宰 堀米 顕久)

 

 

■ 課題本

 

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

 

(タイトルはAmazonにリンクしています)