■ 出張BunDoku「BunDoku Kids」@ハートフルウェーブ vol.7
日 時:2016年5月29日(日)18:00~20:00
会 場:フリースクール「ハートフルウェーブ」さま
参加者:8名
案内人のAkihisaです。
今回は、市内のフリースクール「ハートフルウェーブ」さまにて、子どもたち向けの出張BunDokuを開催させていただきました!
普段のBunDokuは、参加者ひとりひとりがオススメの本を持ち寄って紹介する「本のプレゼン会」のようなスタイルですが、こちらの出張BunDoku ではハートフルウェーブさまのご希望もあり、課題本を一冊読み込み、学びをシェアするスタイルで行なっています。まさに「読書会」らしい読書会ですね。
今回の課題本は、前回までに引続き「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎;岩波文庫)。今回は第八章、第九章、第十章を読んで対話を行ないました。
第八章「凱旋」は、コペル君と友人たちの仲直りの物語です。 参加者の感想としては、
・本題を切り出すまいか悩んでいる葛藤が「ひとしきり、…にぎやかな質問と答があたのち、ふと言葉がとぎれました」という描写から伝わってくる。
・「しめっぽい気持ち」という言葉が、まさにコペル君の心情を端的に表していて素晴らしい。
・家族ごとに事情と信念は違えど、子どもの事を考えて学校に働きかけているという姿は共通なのはすごいなと。
・「謹慎」が罰に当たる時代だったんだ。今では学校に行かなくて良いと喜ばれそう。
等々、心理描写の絶妙さと美しさ、また現代の子ども事情との比較が多く話されたように思います。
第九章「水仙の芽とガンダーラの仏像」、第十章「春の朝」が、この本「君たちはどう生きるか」の最後になります。「おじさんのノート」が現れなくなって久しいですが、第九章で、コペル君はおじさんからメッセージの詰まった「おじさんのノート」を受け取ります。そうして少しずつ大人になっていくコペル君の姿や心理が描かれているのですが、参加者からは、
・「大人の使うバットは重くて振り切れませんけれど、小学校の頃お父さんに買っていただいたバットを、いま手に取って見ると、おかしいほど軽くって、短くって、よくまあ、こんなものを振り回していたもんだ、と思うのです」という描写に、大人として生きていくこと(大人のバットを持って振ること)はまだできないけど、小学生として生きていくことは卒業してしまったコペル君の姿が比喩的に表現されていてとても印象的。
・水仙の芽のように「伸びていくことが当たり前」が今は当たり前じゃないように感じられるから、素直に受け取れない・成り立たないのかも。
・「言葉だけの意味を知ることと、その言葉によってあらわされている真理をつかむこととは、別なこと」というのが、今も変わらない至言。
・第一章では不気味に感じた東京の街が、そこに生きるコペル君の知らない人々が、最後には明るく、身近なものとして受け止められていることにコペル君の成長の軌跡を感じる。
等の感想が聞かれました。
私は、どうしても本作品の描かれた時代背景を考えてしまい、西洋~インド~中国~日本への文化・芸術の連続性や、「すべての人々がおたがいに良い友だちであるような、そういう世の中が来なければいけないと思います。人類は今まで進歩してきたのですから、きっと今にそういう世の中に行き着くだろうと思います。そして僕は、それに役立つような人間になりたい」「僕は、いい人間になることはできます。自分がいい人間になって、いい人間を一人この世の中に生み出すことは、僕にでも出来るのです」といった描写が、当時の戦争に向かっていく日本を牽制した、子ども世代に平和と友愛を呼びかけたメッセージに思えてなりませんでした。が、何だか皆さんの純粋な読んだ感想を聞いて、自分はずいぶん穿った見方をしようとしているなと反省させられました。汗
ともあれ、2015年12月から半年間に渡って続けさせていただいたこの「BunDoku Kids!」は、ようやく課題図書「君たちはどう生きるか」がすべて読み終わり、一段落を迎えることができました。
毎回それぞれの視点からの感想があり、新しい見方読み方があり、非常に濃厚で楽しい時間を過ごすことができました。
お集まりいただいた皆さん、楽しい時間をどうもありがとうございました。
今回で読書会「BunDoku Kids!」は一段落ではあるのですが、早速BunDoku×ハートフルウェーブさまの、次回特別企画が決まりました。笑
次回はなんと子どもたちと、BunDoku哲学カフェを開催します!
「本」という媒介を介さない哲学カフェでの純粋な対話は、ひょっとすると一段コミュニケーションのハードルが高いかもしれませんが、子どもたちにとっても、ハートフルウェーブさまにとっても、そしてもちろんBunDokuにとっても、試みる価値のある挑戦と思います。
そんなわけで、まだもう少し、BunDokuのKids企画は継続してまいります。
どうぞ今後とも、BunDokuをよろしくお願いいたします!
(大分朝読書コミュニティBunDoku 主宰 堀米 顕久)