■ 出張BunDoku「BunDoku Kids」@ハートフルウェーブ vol.3
日 時:2016年1月23日(土)16:00~18:00
会 場:フリースクール「ハートフルウェーブ」さま
参加者:5名
案内人のAkihisaです。
今回は、市内のフリースクール「ハートフルウェーブ」さまにて、子どもたち向けの出張BunDokuを開催させていただきました!
普段のBunDokuは、参加者ひとりひとりがオススメの本を持ち寄って紹介する「本のプレゼン会」のようなスタイルですが、こちらの出張BunDoku ではハートフルウェーブさまのご希望もあり、課題本を一冊読み込み、学びをシェアするスタイルで行なっています。まさに「読書会」らしい読書会ですね。
今回の課題本は、前々回(「BunDoku Kids!」@ハートフルウェーブ vol.1)、前回(「BunDoku Kids!」@ハートフルウェーブ vol.2)に引続き、「君たちはどう生きるか」(吉野源三郎;岩波文庫)。今回は第三章を読んで対話を行ないました。
第三章「ニュートンの林檎と粉ミルク ~人間の結びつきについて~」では、コペル君が友達と遊ぶ場面と、おじさんと一緒に友達を家に送っていく場面が描かれます。まずは、後半の「おじさんのノート」は読まずに前半のストーリーだけで参加者から感想を聞きました。最初の友達と遊んでいる場面では、
・友達が来る時間のちょっと前からそわそわする気持ちわかる。
・じゃれてとは言え、のしかかってるのに泣いたり喧嘩になったりしないってなんて平和。
・「それから三人は、しばらくの間、黙って寝転んでいました。もう、お互いに口をきく必要もありません…」という、友達と一緒にいるだけで満ち足りてる感覚って今は感じない。
・この本を読むと「言葉は時代を超えて変わるんだ」って思うし日々実感もしてる。
・風景描写が瑞々しく美しく想像できてとても良い。
といった感想が聞かれました。私は最初に読んだとき、「早慶戦のラジオ放送の真似をして遊ぶ」というシーンが随分シュールに感じましたが(苦笑)、テレビがない時代のラジオの影響力と、自分が子どものときに漫画やアニメ、ゲームのヒーローの「ごっこ遊び」のようなことをしていたことを思い返すと、存外不思議な遊び方でもないのかもしれない、と思い直しました。
続いて、おじさんとの会話や、コペル君の手紙の場面については、
・小学生のとき授業で「何かある物がここに来た経路を想像して辿ってみよう」ってあったけど、コペル君ほど詳しくは想像できなかった。
・コペル君が自分の発見を公言せずにおじさんにこっそり手紙を書いた気持ちわかる。誰かに言って、「で?」って言われるのが一番怖い。
・説明を受けて「何だかわかったような、わからないような、変な気持ちで聞いていた」っていうのがすごく納得する。あぁあのときこういう気持ちだったんだろうなって思う。
といった感想が聞かれました。
後半の「おじさんのノート」では、コペル君の発見が経済学や社会学ではすでに発見・定義され「生産関係」と呼ばれていること、人類が発見を繰り返して進歩してきたことと学問・勉強の必要性、最後に人間らしい人間関係について触れています。
「自分が発見した!と思ったことが、世の中ではすでに知られた事実だったと知ったときってやっぱりガクってなる。ましてそれが自分の考えよりもずっと洗練された形で表現されていると」
という感想がありましたが、例え発見と思ったことが世の中では新発見ではなかったとしても、自分で考えその発見に行き着いたという事実は自信を持って良いことだと思っています。それを教える立場の大人が「教科書に書いてあるね」なんて言ってしまっては、知の芽を潰してしまうだけで。その「発見」から、如何に学ぶことの面白さと大切さを実感させていけるか、が教える側に求められていることなのだと思います。
「学問というものは、人類の今までの経験をひとまとめにしたものと言っていい」
「そういう経験を前の時代から受けついで、その上で、また新しい経験を積んで来たから、人類は今日の状態まで進歩してくることが出来たのだ」
という箇所を読んだとき、私は個人的に、研究者をしている友人がしてくれた話を思い出しました。その友人が、自分が何のために研究をしているのか、何のために学問の世界に身を捧げているのかを熱く語ってくれたことがあったのですが、研究をする、新発見をするということは、まさにこの人類の今までの経験・知見に、微少ながらも新しい経験・知見を加えることなのだと言っていました。(元ネタはどなたか別の研究者のウェブサイトからだったと思いますが)図に表せば、仮に現在の人類の経験・知見を円で表すならば、普通ひと一人の経験・知見はその人類の円の内側の一部分を知るに過ぎず、研究すること・学問に生きることとは、その円の一番外側(一番最新の知見)のさらに外に出ようと、一生をかけて円の縁を叩き続けて叩き続けて何とか1ミリだけでも出っ張りを出すこと、その1ミリ分だけでも人類の新知見を増やすということ、それが自分たちが人生をかけてやっていることなのだと。まさにロマンでした。
この箇所を読んだあとで、「初めて勉強するということが大切なことなんだってちゃんと感じた」という感想も聞かれました。この企画「BunDoku Kids!」は子どもたちに対話と思考の機会を提供しているのであって、必ずしも子どもたちに勉強を促すことを目的としているわけではないのですが、それでも自発的に「学ぶって楽しい」「学ぶって大切だ」と思ってもらえたとしたら、日々学ぶことが楽しいと思っている私としてはとても嬉しいです。笑
その他、
・「人間らしい人間関係」に至るにはどうしたらいいんだろう?皆がお金を十分に持てば人のためを考えるようになるの?
・人はいくら持っても満たされず、求め続けるんじゃないかな。
・両方を持つ必要があると思う。片手に経済的価値を、片手に人間らしい人間関係を。
さらに「人の欲望」「支配欲」から奴隷制度やコスプレ、食物連鎖にも話が発展しました。欲望とは何か?欲求に終わりはあるのか?と言った問いはすぐには答えの出ない問いかもしれませんが、でもそれをこうして真正面から見つめ考え言葉を紡ぎ対話していく、という行為はとても貴重で、意味のあるものだと思っています。ハートフルウェーブさまでの「BunDoku Kids!」が3回目を数え、本の感想や各々の実体験から少し哲学的な思考の方向にも深まっていったことはとても嬉しいです。
お集まりいただいた皆さん、楽しい時間をありがとうございました。
来月以降も引続き、コペル君と一緒に生きるということを考えていきたいと思います。
どうぞ今後とも、BunDokuをよろしくお願いいたします!
(大分朝読書コミュニティBunDoku 主宰 堀米 顕久)